「世界ネコ歩き」批判

NHKでたまに流れている、世界の至る所で撮影されたネコのドキュメンタリー、「世界ネコ歩き」、わたしは見かけるたびに複雑な気持ちになる。

 

出てくるネコは大抵、野外で放し飼いされているネコ、またはノラ猫である。

ネコが野外でのびのびと過ごしている様は、確かに癒される。

 

しかし、ネコが野外にいることは、決して望ましいこととは言えない。

ネコにとっては、病気や飢えのリスクが高く、ネコ同士の争いは怪我やストレスの原因になり、都会であれば交通事故の危険性も加わる。たとえ飼い猫だったとしても、外で妊娠してきて、その子供が捨てられたり、殺されたりすることだってある。

人間も、人によっては糞害や鳴き声などで悩むかもしれない。

環境にも、ネコが悪影響を与えうると言われている。ネコは野生動物を狩って殺してしまう問題が繰り返し指摘されている。番組でも、ネコが鳥を狩ろうとしている場面が微笑ましい光景としてよく放送される。

 

このようにネコが野外にいることにはさまざまな問題がある。このため現在ネコは室内飼いが推奨され、野良猫に対してもその数を減らすべく不妊処置を施しつつ現在いるネコに関しては見守ろうという地域ネコ活動が広がっている。

 

このような状況があるのに、野外で過ごすネコたちの良い部分だけを切り取った番組を無邪気に放送し続けるのは問題ではないだろうか。実際に外にいるネコたちは可愛らしい猫だけでなく、たくさん目ヤニが出ていたり、毛並みが乱れていたり、怪我をしていることも多い。そういうネコたちを無かったことにして、「カワイイ」部分だけ切り取ってみせるのは、野外に出るネコの問題を覆い隠し、解決を遅らせ、画面の枠外に隠された不幸なネコを生み出し続けることにはならないだろうか。特に、公共放送を自認するNHKがこの番組を製作し続けているのは、問題であるとわたしは考える。

 

室内で安全に飼われているネコだって可愛い。家や店舗、逃走防止の対策がされている庭などで可愛がられるネコと、人間の関係を撮るだけでも、十分可愛いネコが映ったドラマになるはずである。あるいは、ノラ猫問題を深く理解しつつ、今いるネコたちの為に奔走する地域ネコ団体を取材するのも良いだろう。

一方、野生でたくましく生きる動物が観たいのなら、キツネでもライオンでも撮ればよいのだ。

とにかく今のままの番組の作り方は、見直すべきではないだろうか。ネコのことを可愛いと思うなら、なおさらである。

 

 

ちなみに、疲れているときネコ歩き風に「あらあら、電車に乗り遅れっちゃったみたい」「たくさん働いて疲れちゃったんだね、おやすみ」みたいなナレーションが入るのを想像すると、頑張れる気がするのでオススメ